固定資産税とは

固定資産税は市区町村(東京23区は東京都)が徴収する地方税です。市町村の税収の41.8%が固定資産税となっており、大きな割合を占めています(平成30年版地方財政白書より)。

毎年1月1日時点で不動産を所有している人に対して課せられ、ほとんどの場合同時に都市計画税が課せられることから、合わせて『固都税』と呼ぶこともあり、概ね4〜6月に管轄の市区町村から納税通知書が届きます。

マンションの場合、課税額は土地と建物それぞれ別に計算されますが、納税通知は一つになっており、支払いは一括もしくは4期分割になります。

税額は対象となる不動産の評価額のうちの課税対象になる金額に税率をかけて算出します。

固定資産税や都市計画税の算出方法

税額決定の元となる不動産の評価額のことを「固定資産税評価額」と言います。

そして、固定資産税評価額を元に出した課税対象となる金額のことを「課税標準額」と言います。

土地も建物も税率は同じで、固定資産税は1.4%を採用しているところが多く(2018年8月現在)、都市計画税は上限0.3%で地方自治体によって自由に設定されます。

基本的な計算式は以下のようなシンプルなものです。

  • 固定資産税=課税標準額×1.4%
  • 都市計画税=課税標準額×上限0.3%

マンションの固定資産税は全体を住戸ごとに按分する

固定資産税は「自分が所有する不動産」に対して課税されるため、マンションの場合は敷地や建物全体の固定資産税評価額を住戸ごとに按分することになります。

そのため各住戸の所有する敷地面積は小さくなり、支払う固定資産税の割合は建物部分が大きくなります。

建物は、共有部分も各住戸が所有権をどのくらいの割合で持っているかによって按分します。

所有権の割合は持分割合といい、多くのマンションでは分譲部分全体の床面積に対する専有面積の割合で決められています。

同じ建物で専有面積が同じなら1階でも最上階でも固定資産税は同額

このように、各住戸の持分割合は専有部分面積比率で決定するため、同じ建物内で専有面積が同じであれば固定資産税は同じになります。 所在階や採光面、角部屋等の部屋位置による違いはありません。同じ60m²の部屋なら1階の北向きでも10階の南向きでも同額です。もちろんタワーマンションのように超高層階に住戸のあるマンションも、同じ面積ならば1階でも最上階でも固定資産税は同じです。

しかし、さすがに市場価格の大きく違うタワーマンションの下層階と上層階で固定資産の評価が同じではおかしいという声が高まり、タワーマンションに対する税制の見直しが行われました。(詳細は後述)

固定資産税には軽減措置がある

固定資産税には軽減措置が設けられており、土地の場合は住宅用の土地かそれ以外かで計算方法が変わってきます。

マンションの場合はもちろん住宅用の土地となるので、次のような軽減措置が適用されます。

  • 200m²以下の部分→評価額が1/6になる
  • 200m²を超える部分→評価額が1/3になる

一般的なマンションでは、よほど広い部屋でない限り土地の持分が200m²を超えることはないため評価額は1/6になります。

新築の建物は固定資産税が半分に!

建物にもいくつかの軽減措置がありますが、マンションで適用される主な軽減措置は新築に対してのものです。

いくつかの条件はありますが、一般的な新築マンションの場合5年間税額が1/2になり、さらに認定長期優良住宅の場合は軽減期間が2年間延長されます。

つまり、新築マンションで長期優良住宅の場合は7年間固定資産税が半分になるのです。

軽減範囲は床面積120m²以下の部分となっており、180m²の住戸の場合は120m²分が1/2、残りの60m²分は通常通りの税額となります。

また、この軽減措置を適用するための条件は以下になります。

  • 床面積が50m²以上280m²以下(共用部分の按分床面積を含む)
  • 2020年3月31日までに新築された住宅

この軽減措置は平成20年度の創設以来2年毎に見直し延長されており、直近の平成30年度でも延長されました。

タワーマンションに係る固定資産税額の見直しとは

平成29年度の税制改正で、タワーマンションの住戸に対する市場価格との乖離を軽減させるため、高さ60m(一般的に20階程度)を超えるようなタワーマンションでは所在階ごとの補正率(階層別専有床面積補正率)を反映して計算することになりました。

建物全体の固定資産税額を変えるわけではなく、按分する比率を階層ごとに変化させて負担額の不公平感を是正しようとするものです。

これにより、20階建以上のマンションでは1階上がるごとに固定資産税額が変わり、40階では1階の110%の固定資産税が課せられることになりました。

ただしこの改正は、平成29年1月2日以後に新築されたタワーマンション(平成29年3月31日までに売買契約が締結された者の居住用の専有部分を含むものを除く)の平成30年度分以後の固定資産税について適用されるため、それ以前に建てられたマンションの固定資産税に変更はありません。

建物の固定資産税はだんだん安くなる

建物は経年劣化によって価値が減少するようになっています。

固定資産税も経年数に応じて緩やかに減額され、当初の20%程度になるとその後は変わりません。減額の割合は主に建物の構造によって決まり、一般的な木造住宅の場合は約20年程度、マンションなどの鉄骨鉄筋コンクリート造の場合は60年程度となっていて、木造の方が早く減額されます。

一方で土地には経年劣化の考え方が当てはまらないため、経過年数による変化はありません。

3年毎の評価替えで税額が変わる

固定資産税評価額は、3年毎に「評価替え」という見直しが行われ、地価や物価の変動、家屋の状況に応じた適正な評価額が保たれるようになっています。

評価替えは、2018年の次が2021年というように実施する年が決まっており、その間の評価額は据え置かれます。

建物は増築などの大きな変化がない限り大きく変わることはありませんが、土地の場合は周辺の状況に応じて変動します。

土地の評価額は基準となる路線価に応じて決まるため、再開発や道路の拡張などで路線価が急激に上昇すると、固定資産税額が大幅に増えることになるのです。しかし、急激な増額は所有者にとって大きな負担になるため、各市区町村は負担の軽減対策として年間の増額幅に上限を設け、税額が徐々に上がっていくように調整しています。例えば東京23区の場合、増額上限は前年の1.1倍までとなっています。

周辺で大規模な開発をしていたり、道路の拡張工事がある場合は路線価の変化にも注目してみましょう。

納付額に疑問がある場合は管轄窓口で確認を

固定資産税は算出方法が難しく仕組みも複雑なため課税額のミスも多く見られます。

ある市では11,285人の課税に誤りがあったことが2018年に発覚しましたし、過去には27年間過剰に徴収されていたというケースもあります。

少しでも疑問に感じたら管轄の窓口に行って詳細を確認してみましょう。

管轄の窓口では、周辺の不動産の評価額を閲覧できる「固定資産課税台帳の縦覧制度」もあります。これを利用すると、所有物件と同じ市区町村にある不動産の評価額を一覧で見ることができ、所有物件との比較確認が可能です。

これらは無料で利用可能ですが、閲覧期間が限定されていたり(2018年の東京都の場合は4月2日〜7月2日)、閲覧時間が限定されていることがありますので事前に確認が必要です。

住まいインデックスでは、簡易的に確認する方法として固定資産税シミュレータを用意しています(対象地域:東京都)。

こちらからお持ちのマンションを探して、シミュレーション結果と実際の税額を比較してみても良いかもしれません。


不動産を持ち続ける限り、かかる固定資産税は、重要なランニングコストの一つです。

固定資産税について知ることで、不動産の持つ価値も今までと少し違って見えるのではないでしょうか。